いきもにあ2026 振り返り ~語られなかったこと~ あるいは副読本的な記事

更新日:5 時間前
2026年10月17-18日、京都みやこめっせにて「いきもにあ」が開催されました。
frogplanetは今回で5回目のいきもにあ出展となりました。
ブースにお越しいただいた皆さま、誠にありがとうございました。
私は関東に住んでいる人間なので、関西まで行ってイベント出展することは経費の諸々もかかり、現実的にはなかなかしんどい闘いにはなるわけです。それでも繰り返し出展するのは、いきもにあでしか味わえない楽しみと空気感とホスピタリティがあるからです。
そして何より親しいフォロワーさんや作家仲間たち、ブースに遊びに来る大勢のお客さんたちと短いながらも楽しい時間を過ごすことができることが大きいです。いつも本当にありがとうございます。
これまであらゆるイベントに出展してきましたが、ここまでディープな生き物の話ができて、出展者としても心から豊かな思い出でいっぱいになるイベントはいきもにあが頂点だと思っています。ありがとう、いきもにあ。
さて、ここからはトピックごとにいくつか取り上げたいと思います。
1.新刊
いきもにあ付近の時期を目標にここ数年はほぼ毎年新刊を発行しています。今回は3年ぶりとなる生物紀行シリーズの新刊「続 ニュージーランド生物紀行」を発行しました。生物紀行シリーズが3年ぶりになったのも我ながら驚きなんですけれども。
もちろんこの3年の間に、他の場所へ生き物を見る目的の旅は何度かしています。でも、次回発行するものはニュージーランド本と割と早い段階から決めていました。2連続で同じ国で、しかも同じテーマの話を持ってくるということはそれなりの覚悟が必要でしたが(一般的な紀行メインの同人誌作家の方々もそういうことをやっている人は観測している限りほぼいません。作者側からしても普通に考えて恐ろしいことです)、シリーズ前作の「ニュージーランド生物紀行」の不完全燃焼感をもってNZ本、あるいはその旅を完結とするなんてことは到底できませんでした。
既に読んでいただいた方もおられるかと思いますが、完全にリベンジの旅です。パンツを脱いだ執筆が少しはできたんじゃないかなというのが現状の自己評価です。同人でパンツも脱げないなんて、死ぬときに絶対後悔しますからね。普段語られない本音を晒し、情けない心情を晒し、名前も知らない誰かにそんなどうしようもない一般人の文章を読んでもらうなんて、通常恥ずかしくて仕方ありません。同人・あるいは創作とは、よくよく考えてみれば異常行動以外の何ものでもありません。でも少なくとも私は、そうした人間の泥臭い生の部分がたまらなく好きです。
ちなみに、「『続』ってことは、前作はないんですか?」と訊かれることがありますが、もう既に予定頒布数すべて捌けてしまいました。再販もしません。いつまでもあると思うな同人誌。内容でいえば続NZだけでも充分なので、新刊を読んでいただければ、これまでの既刊で隠れていた心の深い部分にあるものを覗き見することができます。
既刊から順繰りに読んできた人と、新刊からいきなり読んだ人とではだいぶ印象は異なるだろうなと思っていますが、ひとつ言えることは既刊はいずれも同行者がいる旅であり、それにより首輪をつけられているのでだいぶマイルドな旅と仕上がりになっています。反面、今回の新刊は完全に一人の旅です。計画から実行、そして執筆を終えるまでずっと一人です(もちろん道中で出会って話す人はいます)。首輪を外されています。一人の旅ということは、思考の整理や会話の相手はどうやっても自分自身しかいないということです。それが何を意味するかは読んでいただければ解るかと思います。
だからこそ、既刊を面白いと言っていただいた方が新刊を読むのは正直なところ不安を感じますし、新刊から入った人にはいつものSNSから感じられる雰囲気と大きく違った印象を与えるかもしれません。あるいは、新刊を先に読んでしまい既刊を後から読んだ場合は、あれ?となるかもしれません。作者の手を離れた後は読者の受け取り方次第です。万人に刺さるものではないでしょう。でもきっと、同じような趣味をやっている人や、何かを目指して生きてきた人の中には、どこかに揺さぶられるものがあるんじゃないかと信じています。
今回の新刊発行以前の段階で気付いている人はおそらくいないと思うのですが、私は怒りや苦しみといった負の感情から創作をするタイプの人間です。毎回このクソと思いながら執筆しているし、嫌だったり苦しかった出来事を何度も何度も反芻して、忘れそうになったらまたなぞるように情景を思い出し、その苦汁を糧に旅に出たり、物を作ったりしています。
(気付いている人はいまい...と思ったのですが、過去のブログ記事から怒りが滲み出ていた)
今回の新刊はその最たるものです。前作から数えて3年。ですが、2019年頃「あいつをどうしてもこの目で見たい」と思ってしまいました。およそ合計8年分の苦悩です。それでもまだ全然満たされていない。救われたい、でも、救われたくない。私の想像ではこのあと少なくとも5年くらいはHolacanthellaやその周辺の生物で悶々としているのではないかと思います。このエネルギーが尽きるまでは何かしら作っていられるんじゃないだろうか。ただどこかのタイミングで満たされてしまった場合エネルギーは枯渇するので、その後のことはどうなるのか自分でも分かりません。パタリと作家活動をやめる可能性すらあります。でも出来る限り続けたいという気持ちはありますし、その頃になったらまた新しい別の目的や旅先が見つかっているかもしれません。
2.生体展示
今回のいきもにあでは過去最大数の生体展示を行いました。毎年、近所の緑地や公園などから採集した土壌動物を連れてきています。その日採れの新鮮な土壌動物なので、何を持っていけるかといった話は事前にはしていません。そしてこれも日頃のフィールド活動の一環なので、普段見ない種が近所の緑地で出てきて驚いたりします。
周辺の観察ツールとしてはルーペや虫メガネ、スマホ用レンズを準備してました。また、今回はパネルも新規に制作しました。パネルはよく見ていただけましたし、小さなお子様から大人の皆さままで夢中になって土壌動物を観察していただけて大変嬉しかったです。これからも土壌動物をよろしくお願いします。
特に人気だったのはナガズジムカデとヤスデ全般です。ハガヤスデに大興奮のお客様がいらしたり、マクラギヤスデはかわいいとよく言われていました。トビムシでは例年のことながらイボトビムシは大人気でした。今回はアオイボトビムシ属だったので、一見青黒い粒にしか見えないのですが、ルーペで覗いてみてくださいと伝えると「毛が生えてる」とか「もわもわしてる」と伝えてくれる人も多く、小さな生き物を観察する醍醐味をその場で味わっていただけたのではないかと思います。カニムシもとても人気で、土壌動物を少し知っていそうな人に「カニムシいますよ」と教えると「見る見る!」となる方が多かったです。いきもにあの会場においては、トビムシやカニムシは名前だけ知っているという人は多い印象ですが、その実物、特に生きた状態で見ることはなかなかないようです。
一般的に土壌動物は、動物園や水族館では見ることはできません。昆虫館等の施設ではモノによっては展示がある場合もありますが、1mm程度の土壌動物をおおよその分類が分かっている状態で手に取って間近に観察できる機会はそう多くはないと思います。「なかなかこうやって見る機会もないよね」と言っている方も多く、本当にその通りだなと思いました。なのでこうしたイベントでは出来る限り生体展示をやりたいと思っています。個人の微々たる力とはなりますが、少しでも教育普及的なことができていれば幸いですし、私がいきもにあに出展する主要な理由の一つは、まさにこのためです。
3.嬉しかったこと
対面イベントの醍醐味は、お客さんの声を聴けることです。ある意味ではイベントで直接話すということが最もライトであり、それと同時に一つ一つの言葉が作家を生かしています。
・同人誌の感想
今回はこちらが一番多かったと思います。いきもにあにも複数回出展していますし、本当にありがたいことに毎回新刊を手に入れてくださる方もいらっしゃいます。感謝してもしきれません。その際に既刊の感想を伝えてくださることが多かったです。中でも嬉しかったことは、「写真も良かったんだけど、文章がおもしろかったからまた読みたいと思って」という言葉です。それから土日出展ならではだと思うのですが、「昨日買って読んでおもしろくて、また今日は別のを買いに来た」というお話も聞きました。まず、両日参加されているのが凄い。でもそれくらい面白いイベントですよね(土日で入れ替わるブースもありますし、講演会の内容も別です)。しかも、昨日読んで、別のを買いに来たと...そんなことあってもいいんでしょうか。泣くほど嬉しいです。
・カードゲームの感想
「石の下にはなにがいる?」というカードゲームを頒布しています。内容は石に見立てたカードをめくって、実際に石の下から現れる土壌動物を覚えて、絵柄を揃えたら採集できるというものです。要するに土壌動物で絵合わせするメモリーカードゲームなのですが、アイテムカードやイベントカードがあり、少し変則的な遊びが加わっています。
以前こちらのゲームを買って遊んだという方が何人かいらっしゃいました。お子さまがゲームで遊んでいると保護者の方が伝えてくれている横で、試遊コーナーで遊んでいるそのお子さまたち。え、めちゃくちゃ気に入ってるじゃん。やはりこういうゲームはお子さまに楽しんでもらえるのが一番です。ミニ試遊コーナーでは大人の方も含めて、割とひっきりなしにみなさん遊んでいたように思います。
それから、子供たちを集めたイベントのような場でみんなで遊んだよと写真を見せてくださった方もいました。小さな子供たちがカードを囲んで座り、遊んでいる様子がたくさん写真として残されていました。ゲームで遊んだ後はカードの絵柄を真似て絵を描いたりして、遊びと学びのツールとして役に立っていたようです。私個人としては子供たちに遊んでもらいたい一方で、そのような場所がなかなかありません。なのでこうした報告は感激します。本当にありがとうございます。
・メッセージノート
直接お客さんの声を聴くだけでは飽き足らず、メッセージを自由に描いてもらうノートを設置していました。結果みなさんからいろいろなメッセージをいただくことができました。時々見返してはパワーをもらおうと思っています。
副次的に、フォロワー同士の伝言板みたいになっていたのが面白かったです。いきもにあにはあちこちに誘惑があって、一緒にまわっているつもりでもすぐに逸れてしまうかもしれませんからね。
4.イメージとストーリーの共有
ここからはブース全体のテーマや心掛けていることについて紹介します。
私のブースではグッズを筆頭に、同人誌や生体展示、カードゲームの試遊コーナー、土壌動物の写真アルバムなど、おもしろいものを盛りだくさん置いています。生体展示でルーペを使って見てもらった後に、拡大写真をお見せしたり、お客さんが気になっているグッズのモチーフになっている生き物の写真や生体をお見せしたりと、ブースの中で見るものの流れができるようにしています。私が作るグッズは、今は土壌動物モチーフのものが多いですが、一般的には土壌動物にはどんなものがいてどんな形をしているのか、漠然としたイメージ程度にとどまっていることが多い印象です。そこで写真や生体を見せることで、私がどのような生き物から着想を得て形にしているのか、実際にはどんな姿なのかといった具体性のあるイメージの共有を行うことを出来る限りで行っています。
動物園や水族館でも印象に残った生き物をモチーフにしたお土産品を買ったりするんじゃないかと思いますが、土壌動物ではそういう意味では難易度が高いです。また、一般的に博物館等施設(動物園・水族館含む)で展示されている生き物や目につきやすい身近な野生生物、ペットとして飼育される生物と比較して、「元から好き」という人も相対的には少ないはずです。だからこそ、ブース内で生体展示や拡大写真という印象を強くつけて、「ただグッズを買った」ではなく「このブースで見聞きした(生体/写真)と関連するグッズを買った」という思い出という付加価値をつけたいわけです。これは、いきもにあのようなイベントだからこそ出来ることではないでしょうか。
そしてまた同人誌の話に戻っていきますが、本(広義)ほど情報の塊となっている販売物も他にありません。同人誌の感想や、試し読みした時点で発せられるお客さんの言葉から、話は広がっていきます。「私もニュージーランドに行きまして」という話や、「今度ラオスに行くから読んでみようかな」という人もいました。私が自分の経験を本を通して語るように、私も人の経験を声として聴きたいと思っています。物理的に旅先が同じで話が盛り上がり、情報交換できることもあれば、「こんな生き物を見つけたよ」という話を聴くこともたくさんありました。まさにこうしたやり取りを生み出すのが私のブースの狙いの一つです。そしてこうしたお客さんとのコミュニケーションを作り出すタネが、同人誌であり、生体展示であり、写真アルバムであるわけです。
関連しておもしろかったエピソードを一つ紹介します。
「カマアカザトウムシの鎌」Tシャツというものを販売していました。カマアカザトウムシの鎌というのは、カマアカザトウムシ科の触肢が鎌のような命を刈り取る形をしているのですが、触肢に生えている棘の形状が同定形質の一つになっています。私はこのカマアカザトウムシとその触肢の形状がカッコよくて好きで、触肢の部分だけを3つ+学名を並べたデザインのTシャツを作りました。いわゆる「わかる人にはわかる」アイテムです。
あるお客さんがこのTシャツを一つ買われていきました。それから私のところに来て、少し話をしたのですが、聞いてみるとどうやらその人はその絵柄が一体なんなのか分からずに購入したそうなのです。これには驚きました。折角なので、カマアカザトウムシ科の拡大写真をお見せして、その触肢の形状とTシャツの絵柄が同じであること、また同定形質の話などをしました。その絵柄そのものが一つの生き物であると思っていたそうです。私はどうして購入してくださったのかを尋ねてみました。すると「かっこよかったから」だそうです。完全に同意です。が、ここでストーリーを付けてカッコいいと思ったこの謎の絵柄の正体はなんなのか、それはどういった生き物であるのか、どこが魅力的であると作者は感じているのか、そうしたことを伝えることが私がやるべき活動であると考えています。
個人的には、ただグッズを頒布するだけのイベント出展は勿体ないと考えています。単なる頒布を超えたコミュニケーションあってこそのイベントだと思っています。その方法は少しの会話でもいいですし、SNSを通して感想を残してくれたり、ノートに一言記入してくれるのでもとても嬉しいです。もちろんお客さんみんなと話すことは難しいですが、誰かの心に少しでも残るブースであり、出展者の一人であれば幸いです。
以上、いきもにあ振り返りでした。まだ語れることはあるのですが、この辺りにしておきます。
繰り返しになりますが改めて、いきもにあにお越しいただきありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう。
・お知らせ①
オンラインショップ開店中です。いきもにあ後で在庫僅少のものもあります。
良ければぜひ覗いてみてください。
・お知らせ②
年内の出展イベントは以下の通りです。残りはぼちぼちやって参ります。
11/1(日) おもしろ同人誌バザール@神保町 ブース:し-63
11/8(日) 文学フリマ@東京ビッグサイト ブース:S-75
12/13(日) コミティア158@東京ビッグサイト ブース:た-39a
あっという間に年末が見えてきた...。
・追記
このウェブサイトですが、既に画像の容量がいっぱいになっており、ブログにも画像を追加することができませんでした。少しやりようを考えなければなりません。ブログはnoteにでも移行する頃合いかもしれません。
動画ページに関してはYouTubeに移行中ですので、そちらの方もよろしくお願いします。



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