※今回オオムカデの種名として出すものは購入時についていたものを使用します。
本文が少し長くなったので一言でまとめます。
「死んだムカデを冷凍庫で放置したら切開不要の乾燥標本ができたよ」です。
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みなさん、こんにちは。
一年で最も寒い時期となりましたがいかがお過ごしでしょうか。
管理人は割と寒さに強い方なのでなんなら年中10℃以下であってくれてもいいかなと思ってます。
でもそれだと作物は育たないし海流はおかしなことになりそうだしヘビが出ないのは悲しいので季節の流れというのはやはり大事なんだなあと思う今日この頃です。ただし花粉、おまえは許さん。
さて、表題の通り今回はオオムカデの乾燥標本の作製方法について書いていきます。
とはいっても最初からこれを目的に作ろうと思って作ったわけでもなくなんかできてたという偶然の産物でもあるため、乾燥期間も適当ですしどんな種類でもうまくいく保障はありませんので悪しからず。
このブログを読んでる方のうち何割がご存じか、以前管理人はムカデを人並みに飼育していました(人並みとは?)
最後に飼ってたのが死んでもう4~5年ほど経つと思います。
店で購入したものもいましたし採集してきたトビズムカデやアオズムカデなどもいました。
カッコいいですね。今でも大きいムカデは好きです。
ガラパゴスオオムカデ(として売っていたムカデ)も飼育していました。
ガラパゴスオオムカデといえば当時はマニア垂涎の種。
ペルビアンと並んで二大南米クソでかカッコいいオオムカデという感じでした。
今もこの南米のオオムカデたちは特に人気の種なのではないでしょうか。
昆虫ゼリーを食べる様子。
普段はコオロギ、餌用ゴキブリ、昆虫ゼリーなどを与えていました。なんでもよく食べよく水を飲む良いやつです。
この個体は2度産卵を行いました。
仔をとることは叶いませんでしたが、2016年当時は産卵しただけでまあまあ盛り上がっていました。
今だったらムカデに詳しい知り合いもいますし、幼体をとるまでいけたのかなあとか思います。
みんながんばってくれ!!
そして、お察しの通り本記事の最初に貼ってある画像がこの個体のその後の姿です。
死後数年の時を経て乾燥標本になりました。
乾燥してるので多少縮んでるかもしれませんが頭銅長19cmくらいでしょうか。
曳航肢の存在感があるので大きく見えますね。
曳航肢から触覚の先までは27cmほどあります。
ムカデ標本といえば液浸標本が主流です。
まず死んだ個体はできるだけ細部を観察し、計測、記録などをとっておきましょう!(自戒)
特にムカデは生きているうちに手の中でゴロゴロ転がすことなどなかなかできないのである意味死んでからの方が形態の観察はできるかもしれません。
その次に発砲スチロールなどを切り出して、その上にそっと載せて虫ピンで展肢していきます。
固定できたら発泡スチロールをはずして大き目の瓶にたっぷりの無水エタノールと共にジャボっとします。
場合によってはプラ板などに固定して入れてもいいと思いますし、展肢を省く方法もあります。
というのが液浸標本の主な作成方法。
で、乾燥標本ですがざっと調べてみるとこうしたムカデをはじめとした大型の虫(広義)は内臓を引き抜く(そしてそこに綿をつめる)ことが多いですね。
理由は腐敗の可能性があるためです。
管理人自身も以前イエロージャイアントヒヨケムシの乾燥標本を作るために腹を裂いて内臓をピンセットで取り出し、綿をつめて乾燥させたことがありました。
その後は木箱に収め何年も経過していますが劣化等はしていないようです。
ムカデから内臓を取り出すのはなかなか面倒そうです(いくつか記事を探してみると腹面を縦に裂く方法や胴体を真ん中で切る方法などがでてきました)。
それ以前にガラパゴスは死亡後に液浸にしようと思っていたのですが丁度良い瓶がないという問題がありました。まして展肢していると高さと幅の丁度いいものがない。瓶というのは大抵、幅はあっても口が狭いので入らないんですね。
そりゃ本当は展肢して固まったらすぐエタノールに漬けたかったですが、肝心の器がないというわけです。
これはしょうがない!ヨシ!そのまま冷凍庫へGO!
冷凍庫へGO!はもはや常套句ですね...。
数年後。
昨年の4月に冷凍庫が壊れました。
これは冷凍庫からの「そろそろ中のムカデなんとかしいや!」というメッセージだったのかもしれません。
冷凍餌は緊急避難させましたが、ムカデには蹴りをつけるとき。
そう思った管理人はそのままジップロックに入れて部屋に放置しました(!)
これが真夏だったら方法を変えたかもしれませんが...内臓も腐敗する余地がないくらいカサカサなので乾燥剤を入れておけば大丈夫かと思います。
もちろん本当は冷凍庫に入れて一年以内には外に出して様子を見るつもりでいました。
そういうこともあります、よね。
数年間冷凍庫に放置されたガラパゴスオオムカデは手で持って細部を観察できるくらいしっかり乾燥し固まっていました。やったぜ。
時は江戸時代初期、ところてんを屋外に捨てたところ凍結・乾燥し、それを食べてみると美味しく保存も効き、精進料理にも使えそうだということから現在の寒天の元になったという説があります(諸説あり)。
この記事を書いていてそんなことを思い出してしまいました。
寒空の下に投げ出されたところてんも、管理人のガラパゴスオオムカデもなんだか同じような運命を辿っているような気がします。
偶然の産物はとことん利用してやろう、という話です。
この乾燥標本は脚の先の小さな突起や曳航肢の棘、顎なども直接手に取って詳細に観察することができます。ルーペを使えばさらに良く見えますし、工夫次第では顕微鏡を用いた観察もできるでしょう。
これが液浸の場合だとなかなか気軽にはできません。
持った感じもカッチリしているので丁重に扱えば壊れなさそうです。
ただ一つ、触覚先端側の毛の生えている部分だけはしおしおに干からびてしまいました。
やはり外皮の薄い部分は乾燥が表面にまで影響を及ぼすようです。そのためこの方法は大型の種、大型の個体向きの方法であると言えるでしょう。
また触覚は種同定にも用いる部位なので、どうしても本体を乾燥標本にしたい場合は写真やスケッチでしっかり記録を残すか、あまりいい方法ではありませんが片方の触覚のみは液浸にするという方法も提案できます。
もしくは本体につけたまま触覚のみ樹脂で固めてしまうという方法もあります。手で持った際の破損の可能性も減らすことができます。ただし液浸のように再度そのままの状態にして調べることができなくなるためこの方法は慎重に行ってください。
個人で使う場合は自由なのでお好みの保存方法をとりましょう。
学術的なものとしてはこの方法は使えないかもしれませんが、詳細の観察のしやすさとしては最高だと思います。観賞用としてもいいですね。
普通に展肢するのみでなくお好みで立体的なポーズをとらせることもできます。
本手法の一番の利点としては、保存状態さえ良ければ半永久的に手に持って観察が可能というところです。
次点として大型の虫の乾燥標本作成に必須となる内臓除去の作業を省くことができるところ、ムカデを入れることができる冷凍庫さえあれば誰でも簡単に作成が可能というところでしょうか。
実際に作成に挑戦する場合は管理人のように冷凍庫で数年放置する必要はないと思いますが、念のため1~数か月ほどは冷凍が必要となるでしょう。
展肢した状態で板に乗せるか薄めの箱などに入れ、それをそのまま冷凍庫に入れます。乾燥が目的のため密閉容器などに入れる必要はありませんが、破損の可能性があるので穴の開いた蓋・メッシュのある蓋などがあるとよさそうです。
また取り出すタイミングは秋冬などの比較的乾燥し、気温の低い季節にしましょう。
内臓が完全に乾燥していても標本の大敵となる虫が寄ってくる可能性があるためです。
取り出したら冷凍時に入れていた箱や板ごとジップロックに入れ、乾燥剤や防虫剤と一緒に冷暗所に置き様子を見ます。
最終的には乾燥標本のためこの状態で最終形にしてもいいと思いますし、ある程度時間がたって大丈夫そうなら木や紙製の標本箱やドイツ箱などに収めてもいいと思います。
その他保管の方法は一般的な昆虫標本に準じますので調べてみてください。
管理人は冷凍庫から取り出して、常温下でジップロックに入れてからもうすぐ一年ほど経ちますが全く問題はなさそうです。古い燻製みたいな匂いがうっすらとします。
とはいえ、部屋の環境は人の数だけあると思いますので冷凍庫から取り出した後の湿気や虫には特に注意してくださいね。
オオムカデ以外でもある程度外皮に厚みのある虫であればこの方法がとれそうです。
甲殻類は乾燥してもそれなりに臭そうなので内臓を抜かない限りは厳しいかもしれません。
蜘蛛以外の大型鋏角類には使えるかもしれませんが、ヒヨケムシは恐らく腹部がしおれると思います。
またガラパゴスオオムカデの場合は影響はありませんでしたが冷凍・乾燥により退色などが起こる可能性もありますのでご注意を。
以上、オオムカデの切開なし乾燥標本の作製方法についてでした。
本手法は真似していただいても構いませんが失敗しても当方は一切の責任を負いません。自己責任でお願いいたします。
それでは、また。